茶筅について。道具の違いとその影響への考察。
2年くらい前に、人に話すために書いた文章です。
教授に見せようと思って、だ、である調で書いたのですが、見せずにお蔵入りしました。
しまっておくよりは読んでもらって、また書く機会があれば書き直したいと思ったので、読んでください。できたら質問もください。そして愛してください。
茶道家・茶人が使う道具の一つに「茶筅(ちゃせん)」がある。わたしが右手でつまむようにして持ち、茶碗の中で抹茶をかき混ぜるために使っている道具である。
茶筅は竹でできている。竹の節の部分を利用して、繊維に沿って細く割り、黒い麻の紐で内側の穂と外側の穂に分割して作ったものだ。
日本では現在、抹茶を点てる時に使用される。茶道では抹茶で濃茶と薄茶の2種類を作るが、濃茶用の茶筅は一本一本の穂が太く、薄茶用の茶筅は一本一本の穂が細い。
濃茶は粘り気がありトロッとしていて、薄茶は泡がよく立つ。
茶筅は流派によって、素材となる竹の太さや色、穂の曲げ方が異なる。
使用する人によって、穂の数の好みが変わる。
元々、茶筅は中国でできたものである。
鉄製の鍋の焦げ付きを落とす時に竹を割ってタワシ的に使っていた道具が由来とされる。
粉末状にした茶をかき混ぜる際に使ったことで、茶の道具として利用されるようになった。
当時は現在使われているような繊細なものではなく、単純に竹の先を割って作った、櫛のようなものだったそうだ。
中国では釜炒り製法の緑茶や烏龍茶が製造されるようになってから点茶法(粉末状にした茶をかき混ぜて飲む方法)は失われてしまったようである。
日本には、西暦1000年から1200年頃の間、中世の頃に中国の宋から点茶法が伝えられたと推察される。
それ以降、1600年頃に千利休がわび茶を大成し、千利休の子孫及び弟子によって茶道という形で日本には点茶法が伝わっている。
現在、日本で作られる茶筅の90%以上は奈良県の生駒でのみ作られる。
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茶筅で抹茶を点てなければいけないのですか?と聞かれたことがある。
「そんなことはないと思います」と答えた。
茶道の点前を習い、稽古をする目的なら、茶筅を使うべきであるが、日常的に飲用するためであれば、必ずしも茶筅を使用すべきだとは思わない。
知人の台湾人はマグカップに抹茶を入れて、熱湯を注ぎ、箸でかき混ぜて飲んでいた。水の入ったペットボトルに抹茶を入れて、振って飲む人もいる。わたしもたまにそうする。
しかし、以前わたしは実験的な茶会をしたことがある。
カクテルのシェイカーと、電動の泡立て器と、茶筅の3種類で作った抹茶の味はどれほど変わるのかという実験だった。
オーストラリア人の女性、タイ人の女性、日本人の女性の3人に飲んでもらった。
茶筅を使った抹茶が一番美味しいと3人が言った。
茶筅を使うと、抹茶をお湯によく溶かすことができる。
バーテンダーの知人に聞いたことがあるが、カクテルのシェイカーはお酒とお酒を混ぜているというよりも、氷と一緒に攪拌することで温度を下げて適温にしているらしい。
泡立て器は空気を入れて泡を立てるための道具である。目的が違う。
茶筅も、穂の数が違うと、空気の入り方に影響がある。80本立てよりも120本立ての方がきめ細かい泡ができる。
きめ細かい泡は口当たりをまろやかにする。生ビールの泡のようである。
しかし、混ざり方においては80本立てでも構わない。むしろ120本立てでは泡がよく立つゆえによく混ざったと勘違いしてしまう。
しかし、抹茶において泡がふわふわになるということは、分かりやすく、楽しいことである。
初心者であれば「泡が立ちません」という人もいる。それほどに、泡が立つかどうかが抹茶を立てる技量であると思われている。
泡を立てたいなら日本産の竹を使った高山茶筅の120本立てを使うべきである。
しなやかで力強い竹と、繊細な技術で作り上げた120本の穂が、ホイップクリームのような泡を作り出してくれる。
中国や韓国の竹を使った茶筅は、繊維が硬い。弾力性に欠けるので泡が立ちづらい。
初心者が扱うとほとんど泡が立たないことさえある。
ちなみに、そう言いながらわたしは自分で飲むときは最近、特別樹脂の茶筅を好んで使っている。
洗うのが簡単で、竹と違って消耗しないので、持ち運びにも便利である。少しコツが必要だが、十分美味しく立てることができる。
抹茶を飲むときは、時と場合や目的に応じて飲むのが一番よいと思う。