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日記ということにします。しばらくは。

浜松市の備前焼き陶芸家、井口淳さんの作陶風景と人物紹介。

 

こんにちは、茶人の神崎です。

 


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今回は、わたしがいつもお世話になっている陶芸家の井口淳さんを紹介します。

上の写真のテーブルに並べられている皿も井口さんの作品です。


陶芸家 井口淳


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略歴

1977年 静岡県浜松市生まれ
2002年 愛知県立窯業高等技術専門校修了
備前焼作家 山内厚可先生のもとで修行
2005年 備前焼窯元 備州窯に陶工
岡山県重要無形文化財 山本雄一先生の師事 2011年 京都府立陶工高等技術専門校図案科修了
2013年 独立 静岡県浜松市にて作陶
2014年 フランス穴窯焼成プロジェクトに参加


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=賞歴=

1999年 静岡美術展 入選
2000年 静岡美術展 入選
2001年 全陶展    入選
2010年 一水会展  入選
2011年 萩大賞展・京展 入選
2012年 国民文化祭工芸展 奨励賞
2013年 静岡美術展  入選
2015年 静岡美術工芸家協会展 朝日新聞社


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2019年9月現在、41歳になります。


井口さんと神崎の関係

 

2018年、わたしが鳥羽グランドホテルで呈茶していた歳に知り合った掛川在住のかたが、茶どころである掛川、浜松、森町あたりを紹介したいとのことで、静岡県西部に訪れました。


井口さんは、浜北にアトリエをもち、その時は磐田にあるシルクロードミュージアムで個展をしていました。

シルクロードミュージアムは浜名梱包の会長自らコレクションした紀元前三千年頃から十五世紀頃までの土器やイスラム陶器、ガラス、また、コイン、ガンダーラ様式の仏像やレリーフなどを常時展示しています。

井口さんは備前で修行した期間が長かったため、備前焼をメインにカップや皿などの日常雑器から、抹茶碗や水指などの茶道具も作っています。


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もともと、陶器のなかでもわたしは備前焼は好きであり、井口さんもちょうど茶道についての理解を深めたいという考えがあったところから、親睦を深めることになりました。

 

その後、わたしは東京の墨田区から静岡県の森町に「地域おこし協力隊」として移住してくることになるのですが、面接をしたり、家を探したり、車を探したりする際に、アトリエに宿泊させていただくなどのお世話になりました。

 

この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


井口さんの作陶風景

 

2019年7月。登り窯での窯焚きに密着した様子を紹介します。


浜北のアトリエ。

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多忙につき、いない日も多いそうですが、電話をいただければ調整もつけられるとのことです。
さいきんは、陶芸教室も精力的におこなおうと思っているそうです。


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掃除する井口さん


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ギャラリーの様子。
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さまざまな作品がところ狭しと。
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電動ろくろでの作陶。整形。


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今年の夏は涼しく、気温が上がらない日が続いたりしたので、粘土が乾きません。

井口さんは車の屋根の上に乗せて、車の表面に蓄えられた太陽の熱も利用して乾燥させていました。


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天竜川をのぼった、石神という地域。

初見ではまず、Googleマップによってちがうところへ連れていかれる秘密の薪窯

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山ごもり用の家。
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スギ、ヒノキなど、天竜地区の木材屋さんから買った端材。一回の窯焚きで、6日間、5000本も燃やすそう。
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窯。
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窯詰め。
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コロコロしてかわいい。
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大物や、弟子の作品も。
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レンガと、泥で隙間を埋めて
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焚き火から、燃やしはじめる。
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火の神様に成功の祈りを捧げ、窯焚きがスタート。
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青柿がすこしずつ大きくなり始めた季節でした。これから井口さんは家族や弟子やお手伝いの数人で、一週間ほど、窯焚きをつづけます。
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100度で窯の内部の水分を追い出してから、300度、400度、500度と徐々に温度をあげていきます。


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火を絶やすことなく、見守りながら。


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熱さに負けず。


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井口さんのお母様(陶芸家)も手伝いに。

 

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夏の夜中。1000度を越える窯焚き。そばにいるだけで尋常ではない汗が吹き出てくる。

 

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真っ赤に燃えて、焼き上がった陶器。


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取り出して


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籾殻のなかにいれる。


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すぐに籾殻をかぶせる。


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すると、籾殻が炭化し、表面に定着して黒く重厚感のある色味になります。


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こちらは炭。


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皿や湯飲みの上に落としてやります。


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温度変化で、窯変が起こります。


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灼熱地獄を耐えぬき


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6日間の長丁場、朝に窯焚きが終わりました。


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そしてすぐさま個展の準備がはじまります。


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掛川城。二の丸茶室


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庭への展示もあります。


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ぐい飲み。青色はマンガンで出しているそうです。


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お皿。


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神崎「備前焼きの粘土って、どういう特徴があるんですか?田んぼの土とか、鉄分が多いとか聞いたことがあるんですが」

 

井口さん
「田んぼの下のほうの焼き物に使える土だな。農閑期、稲をかり終わったあとに取る。
ボウリングをして、焼き物に使えるかどうかをたしかめるんだよ。
鉄分は多くはないが、6日間、薪の炎で焼くことで薪の炎のアルカリ分、ケイ酸分と結びついて、味わい深い色がでる。
電気窯で12時間くらいで焼くと、白っぽい色に焼き上がってしまう」

 

神崎「だから備前焼薪窯で焼くんですね」


神崎「ところで、備前焼きと言いつつ、いろんな色がありますね。どれも備前なんですか?」

 


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井口さん「磁器系の作品もつくってるよ。そもそも、なにをもって備前焼とするかという問題がある。備前の土とか、備前に窯を持っているとか、備前の技術とか。いまは、どこにいても、どんな粘土だって買えるし、トラックで運んでこれるし、好きなところに窯をつくればいい。わたしは浜松で生まれたということもあってここでやっているがね」

 

備前で修行した期間が長かったから、備前焼の技術がベースだが、わたしは色のこととか、形のこととか、毎回すこしずつチャレンジするようにしていて、今となっては備前ぽくないものも多くなって、なに焼きですか?と聞かれても厳密には井口焼きですかねえとしか答えられないところがあるよな」

 

 

神崎「なるほど、以前に森町の土も混ぜてると言ってましたね」

 

神崎「最近のおすすめというか、人気の作品はどういう系統ですか?」

 

井口さん「かたちで言うと、マグカップや皿かなあ。やっぱりお買い求め頂きやすい価格帯と、使いやすいからかな」

 


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井口さん「今回の掛川城二の丸茶室個展では、青系を新作として作ってみた。
備前のボディ、森町の土をブレンドして土の配合を変えて、白化粧をかけて、透明釉をかける三重構造にしたり、
鉄分の多いところと、白いところのツートンカラーにできたり
白い粉がダマになっているところがアクセントになるな」

 


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神崎「コバルトの青よりクールで、でもクールな中にも温かみがある。冬にも使いたくなるかんじですね」

 

おしらせ

井口さんの作品を実際につかって、楽しめる個展を、浜松のbar プルーヴェさんでおこないます。

 


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ポップアップカフェは9/28 11:00-19:00です。抹茶ラテやほうじ茶ラテも出します。

 

毎月やっていくことも考えていますので、よろしくおねがいします!