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日記ということにします。しばらくは。

君たちはどう生きるか 感想と要約。

本の処分をするということで、四冊目『君たちはどう生きるか吉野源三郎著。



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はじめに簡単な要約と感想を。

昭和12年(1937年)に出版された本で、2017年には漫画化され、ベストセラーになりました。

時代は太平洋戦争直前。満州事変が1931年にあり、出版年の1937年に日中戦争が始まりました。貧富の差、日本は世界にどう向き合うべきか、私たちは日々をどう考えて生きていくべきか、そんなことを伝えるための児童書です。

主要な登場人物は

コペルくん
・本名は本田潤一くん
・中学二年生の男の子
・インテリでひ弱
・世界的な発見をした「コペルニクス」にちなんであだなをおじさんに名づけられた。

おじさん
・出版社に勤めている
・コペルくんのお母さんの弟。
・コペルくんのお父さんと「コペルくんを立派な人間にする」と約束している。
・コペル君に「ノート」を通してきづきを与えてくれる。(答えをおしえるわけではない)

浦川くん
・クラスメイト
・背は中くらいで胴長。運動音痴で勉強もあまりできない
・実家は豆腐屋を経営しているが、ノートを何冊も買えない貧乏な家庭の子として描かれている
・商品の余りの油揚げを弁当に持ってくるのでイジメっ子たちから「油揚げ」と呼ばれている

北川くん
・クラスメイト
・小柄だががっちりしている。そして頑固。あだ名はガッチン
・正義感と勇気がある。

山口くん
・クラスメイト。
浦川君をイジメる

上級生たち
・愛校精神があって下級生をいじめる

です。

貧乏な浦川くんに意地悪を言ったり、服に砂を入れたり、学級会でわざと目立たせようとしたりする山口くん。ガッチンが怒って山口くんを殴ります。イジメはおさまったものの、今度は上級生にガッチンが目をつけられてしまう。「みんなで殴られてやるよ」と言う浦川くん、賛同するコペルくん。
冬の雪の日「俺たちの雪だるまを壊しただろう」「お前だな、ガッチンというやつは」と迫りくる上級生たち。たまたま仲間と離れた場所にいたコペル君は「みんなで殴られるから怖くない」という約束をしていたのに、上級生たちの暴力が怖くてガッチンたちの元へ行けずに知らないふりをしてしまう。
殴られたガッチンや浦川くん、殴られなかったコペルくん。裏切ってしまったことに悩むコペルくん。勇気を出して手紙を出して謝ることで再び友情が結ばれた仲間たち。


そんな、「こどもの学校生活」の合間に、コペルくんが気づいたり、疑問に思ったことに対して、おじさんが「大人の視点」からヒントを伝えるという小説になっています。

誰もが経験したことがあったり、目撃したことがあるような、イジメという問題に対して、当事者としてどう向き合うべきか。そしてイジメだけでなく、どう友情をはぐくみ、社会への理解を深め、なにを生産して社会とかかわっていくのか、立派な人間を目指すとはどういうことか。など、さまざまなテーマに対して考えさせられる本です。

私がはじめて読んだときは20歳くらいの頃でした。当時は激しく考えさせられました。物語とは言え、14歳でコペルくんが思い至った、人と人の結びつきや、社会の結びつきに、自分がいままで無頓着だったことに大きなショックを受けましたたことを覚えています。

イジメに対しては当事者意識も強かったので、ケースバイケースであり簡単に解決策があるものでもないことや、現代ではこどもたちだけの問題ではなくモンスターペアレントの問題も絡んできていたり、イジメ自体がスマホを利用した形態に変化して事件になるまで表面化しないということもあるため「なるほど」と思うことはできませんでした。それでも、そういった点を踏まえて「じぶんだったらどうするだろう」「現代だったらどうだろう」と考えるという意味では良い機会にもなったと思います。

自己啓発系の本を読んでいる人であれば一読はしている人も多く、共通の話題としても出やすい本です。20代後半であったり30代にもなってくればもう、読むまでもなく「あたりまえのことしか書いていない」と学びも少ないかもしれませんが、もともと児童文学として書かれたものですので、そのあたりのことも踏まえつつ読むといいと思います。

目次 
1 へんな経験
ものの見方について(おじさんのノート)
2 勇ましき友
真実の経験について(おじさんのノート)
3 ニュートンの林檎と粉ミルク
人間の結びつきについて(おじさんのノート)
4 貧しき友
人間であるからには(おじさんのノート)
5 ナポレオンと四人の少年
偉大な人間とはどんな人か(おじさんのノート)
6 雪の日の出来事
7 石段の思い出
人間の悩みと、過ちと、偉大さとについて(おじさんのノート)
8 凱旋
9 水仙の芽とガンダーラの仏像
10 春の朝

君たちはどう生きるか』からの章ごとの要約と学び

1.へんな経験、ものの見方について おじさんのノートからの抜粋

雨の降る銀座。高いところから歩く人たちを見て「人間て分子のようなものだね」と言ったコペルくん。1人ひとりの人間はみんなこの広い世の中のひとつの分子なのだ。
キリスト教が主流だった時代、地球が宇宙の中心であるという天動説が信じられていたが、コペルニクスはそれでは説明がつかないとして地動説を唱えた。現代では地動説が証明されたが、当時は教会から危険思想だと考えられて、この学説を支持する学者は牢屋に入れられたり、書物が焼かれたりした。
何百年とかけて地動説は認められた。
じつは、地球が宇宙の中の天体のひとつとして動いていると考えるか、地球を中心として宇宙が回っていると考えるか、この二つの考え方というのは天文学のことだけではない。世の中とか人生においてもそうなのだ。子どものうちは、どんな人でも天動説のような考え方をしている。みんな自分を中心として考えている。大人になるとだんだん地動説のようになっていくが、大人でも自分中心の考え方を抜けきっている人はすくない。

しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だと言う考え方にかじりついていた間、人間は宇宙の本当のことが分からなかったのと同じように、自分を中心としてもおごとを判断してゆくと、世の中の本当のこともついに知ることができないでしまう。

コペルくんが「人間って分子のようなものだ」と思ったのは、天動説から地動説に変わったような、大きなできごとだった。

2.勇ましき友 クラスのいじめにどう対処するか

クラス会を開くにあたって、誰が演説するか投票で決めることになった。山口くんが「アブラゲに演説させろ」と紙を回して、浦川くんに投票させようとする。浦川くんが壇上に上がってどぎまぎしたり、恥をかくのを笑ってやろうという魂胆だった。

正義の気持ちから怒って山口くんに殴りかかるガッチン。「いいんだ、そんなにしなくてもいいんだよ」という浦川くん。事情を知らない先生に怒られたガッチン。ガッチンに同情するコペルくん。

話を聞いたおじさんはコペルくんへのノートに書き記した。

コペルくんのお父さんの希望も「コペルくんには立派な人になってほしい」というものだった。コペルくんが山口くんの仲間でなく、卑劣なことやひねくれたことを憎むガッチンを尊敬できる人間でよかったと思っている。

立派な人間になるには、立派な考え方を持たねばならないが、水を言葉で説明することはできても、水を飲んだ時の味は君が飲まねば分からせることはできない。立派な人たちが書き記してくれていることを読むと同時に、コペルくんは様々なことを自分で経験していかないとならないのだ。

常に自分の体験から出発して考えていけ、ということを伝えたい。

お行儀がよくて、人から教わったことをこなしたり、世間から見て非の打ちどころのない人になることが立派な人間になるということではない。立派そうに見える人、ではなく、本当の意味での立派さとは何かを自分自身で考えて、自分自身の心で感じたことを大切にしていってくれ。


3.人間同士のつながりについて
重力を発見したニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て「これをもっと高くしても落ちてくる」「もっと高くしても落ちてくる」「じゃあなぜ月は落ちてこないんだろう」と考えたときに地球と月が引っ張り合っていることに気づいたのだ。

一歩深く、一歩深く考えていくことの重要性に気づいたコペルくんは、オーストラリアでつくられたミルク缶を見て考える。

粉ミルクができるまでに、牛、牛の世話をする人、乳をしぼる人、工場に運ぶ人、工場で粉ミルクにする人、缶に詰める人、缶を荷造りする人、、、、運ぶ人たち、、、売る人たち、、考えれば考えるほど、多くの人たちがこの粉ミルクに関わっていることに気づいたコペルくん「人間分子・網目の法則」となづけ、おじさんに知らせた。

おじさんはそれを「生産関係」として知られているのだとノートに書く。世の中では、様々な発見がされてきた。コペルくんの発見も重大な事だが、すでに世界で残されてきた発見を「学問」として学ぶことで、人類初の発見をできるようになるかもしれないよ。と教えるおじさん。

しかし、このように関係しあっているにも関わらず、それぞれが知り合いになっているわけではない。関係しあっているにもかかわらず、世界では争いが絶えない。裁判も起きているし、戦争も起きている。「人間分子」の関係は、たしかに物質の分子のような関係なのだけど、人間らしい人間関係になっていないのだ。私たちは、人間らしい関係を築いていかなければならないんだ。

お互いに行為をつくし、それを喜びとしているような、友達や家族のような関係がすばらしいものだと思わないか。

としめくくるおじさん。


4.貧乏について

学校を休んだ浦川くんは、幼い妹の世話をしながら家業の豆腐屋の仕事をしていた。浦川くんのお父さんが金策のために親戚周りをしているのだという。

貧乏がゆえに仲間外れにされがちな浦川くん、しかしコペルくんはそんな彼も立派に働いて尊敬できる人だと感じる。コペルくんは学校の勉強を教えてあげる。

そんな話を聞いたおじさんはノートで貧乏について教える。
人々は、貧乏であることで見下したり、貧乏であることを理由に卑屈になったりするのだ。自分の着物のみすぼらしいこと、食事の粗末なこと、住んでいる家のむさくるしいことに恥ずかしさを感じやすいものなのだ。一方でお金持ちに対してぺこぺこしたり、する人も少なくない。

貧乏であるということではなく、そういう卑屈な根性を持っているという意味で軽蔑すべき人たちだ。
僕たちも、貧しい暮らしをしているからと言って卑屈にならないように、暮らしが豊かだからと言って、それでじぶんをえらいものだと思わないように。

また、「網目の法則」の続きだけれども、貧しいといえども、生産している人たちがいる。浦川くんのように生み出している人たちだ。そして消費する人たちがいる。コペルくんはなにか生産しているかな。

生産している人と、消費している人というこの二つの関係をよく頭において、生きていってほしい。

5.偉大な人間とは

友人のお姉さんからナポレオンの話を聞いたガッチンとコペルくんと浦川くん(そして水谷くん)ナポレオンの英雄的精神に鼓舞された男の子たち。

愛校精神をたてに、下級生いじめをする上級生の柔道部員。どうする、みんな。

おじさんからのノートでは、ナポレオンについて書いてあった。

ナポレオンは24歳から35歳のたった12年間の間に偉大なことを成し遂げてしまった。ヨーロッパ全土の皇帝になったのだ。しかし、イギリスとの通称を禁じて砂糖が不足し、国民に迷惑をかけ、ロシア遠征では60万人以上の大軍を1万人に減らしてしまう。そして失脚した。そして牢屋に入れられ、死んでしまった。この時46歳。わずか20年の間に素晴らしいことをしたのだ。僕たちがナポレオンの生涯を見て感嘆するのはこの行動力のせいだ。そして同時に、こうかんがえなければならない、その行動力でなにを成し遂げたのか。ナポレオンの戦術は素晴らしかったし、作った法律も明治維新の時の法律の参考にされている。しかし、60万人の家族もふくめ、何百万人もつらい涙を流したことも事実だ。

ナポレオンからも学び、偉人とはどういうことか、よく考えることが大事だ。


6.雪の日のできごと 友人への裏切りについて

とある雪の日、上級生の柔道部たちが「おまえらが雪だるまをこわしたんだろう」と言いがかりをつけてきて「風紀を乱すな」と殴りかかってくる。コペル君は、たまたま離れたところにいたせいで、いじめられたとき助けるという約束を破り、ガッチンと浦川くんを裏切ってしまう。

その罪悪感と、これからどう接していいか分からず、学校にいけなくなるコペルくん。

病気なんか、もっと悪くなってしまえ、そしてしまいには僕なんか死んでしまえ、と泣きながら後悔するコペルくん


7.關段の思い出

いろんな言い訳を考えながら、どうしたら許してもらえるか悩むコペルくん。そしていざとなるとじぶんこそが臆病で卑屈な人間だったのだと気づく。

病気がよくなってから何日かして、ようやくおじさんに打ち明ける。「しっかり謝ろう」「謝ったら許してくれるかな」「それは彼ら次第さ」「じゃあいやだ」とぐずるコペルくんに「男らしくないじゃないか」と直接的に怒るおじさん。

そして手紙を書いて、謝罪したコペルくん。

おじさんのノートには
「誤りは心理に対して、ちょうど睡眠が目覚めに対すると、同じ関係にある。人が誤りから覚めて、よみがえったようにふたたび真理に向かうのを、私は見たことがある」
ゲーテの言葉を引用し、僕たちは自分で自分を決める力を持っている、だから誤りをおかすし、誤りから立ち上がることもできるのだ、と。記されている。



8.凱旋
北川君たちと仲直り。めでたしめでたし。


9. 水仙の芽とガンダーラの仏像
日本と中国とインドとギリシャは歴史的につながっている。

10.春の朝
君たちはどう生きるか

以上、章ごとの要約でした

児童文学と言えど、なかなか考えさせられる内容で、時代を経ても読み継がれる理由がよく分かります。まだ読んでいない人は、是非一度、書籍で時間をとって読んでみると良いかと思います。