Everything is better than

日記ということにします。しばらくは。

「人とつながる能力」を身に着けた先にある未来を想像すること

インターネットやSNSのおかげもあって、簡単に人とつながれるようになった。フォロワー数がモテに影響するとかしないとか、フォロワー数があればそこから経済になるとか、フォロワー数はもはや人間の価値のひとつだとか、人とつながっていることが「絶対的にいいこと」として扱われる文脈は間違いなくあります。

TwitterでもインスタでもYouTubeでも「フォロワーを増やす方法」がやたら紹介されています。


たしかに、人は、知っている人と仲良くするし、知っている人にしかお金は払わないし、知らない人よりは知っている人を助ける。

動物的に言えば、テリトリーの内側か、外側か。つまり敵か味方か、という話と重なる部分は大きいです。人間は理性を獲得したので動物よりも優れているという考え方からすれば、敵と味方に分けないあり方が先進的なのだろうけれど、どうしても人は、区別してしまう。相互フォロワーか、フォロワーか、それ以外か。

フォローしている人には親近感も出てくる。芸能人でも政治家でも今日のランチはなにを食べたのかとか、今は楽屋で何をしているかとか、わかるとなんだか友達感覚になって、リプライを送る人もたくさんいますよね。

本当に、革命的です。

一方で、フォロワーが増えてくると困ることももちろんある。返事をしづらいことを言われたりとか、説教されたりとか、好かれ過ぎてしまったりとか。


そういう中で、つながりすぎないこと。距離の取り方、距離の置き方を知る。そういう能力が重要になってくる時代でもある。今までの人類では考えられなった能力だと思います。


今までは物理的な距離が、そのまま障害になり、制限になっていました。

歩いて会える範囲に住んでいるから友達になれたし、同じ学校の同じクラスにいるから友達になれたし、同じ職場にいるから仲間になれた。

それは原始時代から変わっていない集団形成のメカニズムです。

あの大きな川より向こう、山より向こうの人間は身内ではない。そんな分断がありました。

インターネットは物理的な距離をゼロにしました。

上海の友人とリアルタイムで遠隔ランチをすることもできるし、ドイツの今日の天気だって現地の友人のコメント付きで聞くことができます。

「つながる」ということを単なる現象ではなく「たくさんつながれる人」と「すこししかつながれない人」がいる事実から見ると、やはり「つながる」というのは能力です。

でも、人間は長所によって失敗するという話があります。

たとえば腕力があるから腕力に頼って人から遠ざかられてしまうとか
見た目が美しいからそれを悪用する人に近づかれてしまうとか
賢いからリスクがわかって行動できなくなるとか

たくさんつながれるから、そのぶん変な人と出会う総数も増えたり、ストレスが増えたりする。

稀代の剣豪宮本武蔵の生涯を、スラムダンクの作者井上雄彦氏が描いた『バガボンド』で、50歳を超えた剣聖上泉伊勢守

我が剣は、天地とひとつ。ゆえに剣はなくともよいのです。


と、若き柳生石舟斎に語りかけたシーンがあるのですが、非常に示唆的だと思ったことがあります。

それは、剣を持つ限り、戦いの螺旋からは降りられないという、宮本武蔵の宿命とその行く末のひとつのかたちなのです。

強さがすべて
強さがなければ奪われる
強さがなければ殺される
強さがなければ得られない

と、強さを追いかけていく宮本武蔵は、ふと気づく時がきます

強さがあるから失った
強さがあるから壊してしまった
強さがあるから殺してしまった
強さがあるから奪ってしまった
強さがあるから戦いを挑まれる

強さのおかげで得たものがあり、同時に失ったものがある。

強さがなければ良かったわけではない、
強さの限界に到達したわけでもない

強さという能力
強さというアイデンティティ
強さという道しるべ
強さという鎖

これは、いったいどこまで続くのだろうか、と。
このままで本当にいいのだろうか、と。
敵か味方。あるいは全てが敵に見えてくる。

そこで上泉伊勢守ですね。最強になった(と自分で決めた)時に剣を捨てる。

剣を捨てても強いんですが、剣を捨てることで、戦いのステージ、殺し合いの螺旋から降りるんです。

もちろん簡単なことではなく、その名は轟いているから、挑戦者も来る。

けれど「強さ」のためには戦わない。
殺さず、生かして受け止める。なぜなら強いから。

「強さ」に振り回されない。

そんな示唆を与えてくれます。

「人とつながる能力」をこの「強さ」と置き換えたとき、「人とつながる能力」を鍛えること、身に着けることは必要なこととしてぜひ努力するとともに、「人とつながる能力」があるがゆえに破綻する可能性にも同時に備えておいたほうがいいのかな、と思います。