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日記ということにします。しばらくは。

なぜ私たちは整理整頓や掃除が習慣化されていないのか

なぜ私たちは整理整頓や掃除ができないのか。

確定申告をしなければいけないのに領収証が見つからない、書類に使う印鑑が見つからない、ボールペンが何本もあり、家のいろんなところに散らばっている。着ない服がたくさんある。積ん読がたくさんある。

日常的に清潔で整理整頓された生活を送りたいと思っているのにも関わらず、現実はそうではない。

私です

最近では「片づけられない」の根本的な原因に「精神的な問題がある可能性」が指摘されてきている。

居住空間において大量の物品を度を越して収集することを止められずに著しい苦痛や生活不全を起こしている場合を精神疾患のひとつに分類し「ため込み症」と定義されていたり、鬱気味で無気力になったことが原因でゴミ屋敷になってしまうという分析があったり、ADHD注意欠陥多動性障害)の特徴のあらわれではないかという指摘があったり、様々な見解がある。

実際的には発達障害や精神病、鬱もグラデーションであり、それらの弱い性質が複合的に絡み合い要因になっているかもしれないし、そうでないかもしれない。

いずれにしても何らかの理由で私たちは片付けができない。

「片づけられない」の当事者的見解としては誤った成功体験が原因のひとつなのではないかと自己分析した。

居住空間におけるモノの絶対数は多くないため、整理すれば空間は綺麗になる。

日常で維持できないのが問題なのだが、来客があった時は張り切って整理整頓をして「ギリギリセーフ」にしている(と思い込んでいる)ことだ。

締め切り間際のレポートや書類を、ギリギリに間に合わせることが習慣づいてしまったパターンと同じである。小学生に遡れば夏休みの最終日に宿題をすべて終わらせる行動様式だ。

行動と報酬の誤った結びつき

行動と報酬の誤った結びつきは、心理学の分野でも様々な実験がおこなわれている。

ケンブリッジ大学のウォルフォラム・シュルツらがサルにコンピューターの画面を見せ、知覚のチューブから甘いシロップを出す時に画面上に合図を表示するようにして訓練をする実験をおこなった。サルの脳には電極を埋め込み、VTA(腹側被蓋野)のニューロンの活動を記録した。緑のライトが光った2秒後にはシロップが出てきて、赤のライトが光ってもなにも出てこない。サルは次第に緑のライトが光るとニューロンが活性化するようになる。これは緑のライトと報酬が結びつき、ドーパミンが放出されていることを示している。

サルにとって緑のライトが報酬を示すことをサルが学習し、緑のライトがついた時点でドーパミンを放出した実験結果について神経科学者のディヴィッド・J・リンデンは『快感回路』でこう述べている。

快感と連合学習がこのように合体することで、現実にちょっとした奇跡が起こっているのだ。行動を引き起こす刺激はそれ自体本能的あるいは人工的に快をもたらすもの、たとえばセックスや食べ物や薬物である必要はなく、どんな音でも匂いでも色や形でも記憶でも、快感と結び付けられれば、それ自体が快い刺激となりうる


サルは、2秒後に報酬が確定している緑のライトが点灯してもシロップが出なかった場合、一時的にドーパミンが放出されるものの、シロップが出ないことに気づくとニューロンの活動がほとんどなくなる。これは「学習を上書きすることができる」ということだ。

しかし、実験は続く。報酬が確定している緑のライトと、報酬のない赤のライトに、50%の確率で報酬が出される青のライトを追加して実験したとき、青のライトが点灯したときに一番、長い時間のニューロンの観測と、最大のニューロンの観測が見られた。

これはサルだけでなく、人間がギャンブルをしている時、勝つか負けるか不確定の待ち時間、つまりスロットマシンがまわっている時や、ブラックジャックでカードがめくられるのを待っている時の快感についての証明であるともいえる。

人間の脳はもともと、リスクのある出来事から快感を得るようにできている。

進んでリスクをとろうとする神経系は、進化上の適応であったとも言える。つまり、狩猟をおこなうことに快感を感じなければ生存の可能性が大きく下がるからだ。

現在の人類でも、狩猟をするオスの遺伝子を持つ男性のほうが、採集をするメスの遺伝子を持つ女性よりも、ギャンブル依存症や衝動のコントロール障害のリスクが高いことの由来と考えることもできるだろう。

狩猟に比べればチープなリスクであるが、「来客が来る前に間に合うかどうか」という「リスク」に対しての回避成功が報酬刺激になっていることは十分に考えられる。

同様に「締め切り間際にならないとやる気が出ない」もリスクへの誤った成功体験に由来した報酬刺激による誤学習と言える。

習慣とドーパミン

不確実な報酬にもドーパミンは分泌されるし、確実な報酬にもドーパミンは分泌される。動物は「ドーパミン分泌」をひとつの要因に行動を決定している側面がある。

快感と報酬と依存症に関する統一理論は一般化が難しいところでもあるが、習慣形成の要因に「ドーパミン」が関係しているのであれば、リスク回避で得る快感よりも良い習慣を実行したときに得られる快感を新たに自分に学習させればよいのではないだろうか。

依存とドーパミンと聞くと、オーガズム、甘くて脂肪たっぷりの食べ物、金銭的報酬、向精神薬などが連想される。『依存症ビジネス』にもさまざまな「依存」を利用(悪用)した事例が紹介されている。

しかし、神経科学者のディヴィッド・J・リンデンはドーパミンの報酬神経調節器は、私たちはなにかを快いと感じるとき、ほとんどすべての場合に働いていると述べている。素敵な食事、祈りで感じる神との一体感、ランナーズハイ、友人と過ごす愉快な夜。

自分にとって「快い」「楽しい」と思わせれば、新たな習慣形成がおこなえるはずである。

実際、「運動なんか今まで続いたことなかったのに」という人でも任天堂が出したリングフォットアドベンチャーをやっていたらいつのまにか半年くらい継続できていて身体が引き締まった人も、知人でいる。

これは「運動」に対して抱いていたネガティブな気持ちを「ゲーム」の楽しさによって上書きしたと考えることができる。

「運動」が嫌いな人の中にはじつは「体育」が嫌いなだけだった人もいる。集団行動が苦手だったり、うまく動けなくて迷惑をかけてしまった自分が嫌だったり、つまり「運動そのもの」ではなく「体育で生じる人間関係」に苦手意識を持っていたパターンだ。

リングフィットアドベンチャーは、「意外に運動嫌いじゃなかったのかも」と多くの人に思わせたことだろう。

私自身、リングフィットアドベンチャーはやっていないが、大学を卒業して以来まともな運動をしたことはなかったのに8月にジョギングを開始して習慣形成に成功している。

これはいくつも要因はあるものの、アプリでの記録による達成感や、友人に報告した時に「すごい!」と言われる報酬感も大きいと感じる。

ゲーム感覚でやる、というのは凄まじい効果を発揮すると実感した。

綺麗であることと嬉しさを結びつける

そうじ研究家の舛田光洋著『3日で運がよくなるそうじ力』によると、捨てたいのに捨てられない時はどうしたらいいか?という質問にこう答えている。

「タオル1枚からはじめてください。古くなって取っ手のもげた鍋でもいいです」

鍋一つでも捨てられたら成功です。

そんな成功を一つひとつ積み上げることに意味があるのです。ひとつ捨てるごとに、プラスが溜まっていくイメージです。

これは、様々な心理学者が実験している「フット・イン・ザ・ドア」の法則も利用されている。小さな要求から通していくことで、徐々に大きな要求も通るようになるという法則だ。

「フット・イン・ザ・ドア」の実証について、トロント大学のパトリシア・プリナーは「慈善活動への寄付」を募る実験をおこなっている。

ただ寄付をお願いしたところ46%しか寄付をしなかったのに比べて、事前にボランティア活動の賛同者であることを証明するピンバッジをつけることを承諾した地域住人のうち、9割の人が2週間後の寄付のお願いの際に寄付をおこなったという実験がある。

また、よく言われている「思考が行動をつくる」のではなく、最近の脳科学や心理学の分野では「行動が思考を変える」と言われている。

これについて、英国の心理学者リチャード・ワイズマンは「アズイフの法則」を提唱している。「幸せだから笑うのでなく、笑うから幸せだと感じる」という理論で、1960年代の後半にロチェスター大学で心理学を学ぶジェームズ・レアードがおこなった研究によると、しかめ面をさせた人はは不愉快に感じ、笑顔をつくらされた人は幸せを感じる人が多かったという結果が出ている。実際、近年では笑顔でセロトニンが分泌されることも解明されている。

人は「〇〇であるかのように行動すると、そのようになる(感じる)」のだ。

つまり、これを応用すれば「綺麗が心地いいから片付け(掃除)をする」のではなく「片付け(掃除)をするから綺麗を心地いいと思う」という逆転の発想でいけばよいのではないだろうか。

先に片付けをおこなうことで、達成感を味わい、ドーパミンを出すということである。安易だろうか。

三日坊主プログラム

なにかをするときには「計画」と「集中」の二つが必要である。そして、やるぞという不明確な意気込みや覚悟では行動は促されない。

そうじ研究家の舛田光洋は『3日で運がよくなるそうじ力』で「三日坊主プログラム」を提唱している。

三日坊主というと三日しか続かない残念な人というイメージがあるが、逆に「三日間だけ集中してみる」という考え方でおこなうというものである。

三日だけ集中すればいいのか、と精神的コストを下げることで行動のハードルを一気に下げ、成果があがった様子を見て達成感を味わい、また三日間だけ集中する、また三日間だけ集中する、と、増やしていけばいいという作戦だ。

片付け(掃除)苦手な者としては見落としがちなのは、「捨てる」「汚れ取り」「整理整頓」はまったく異なる作業だと認識すべきだということである。

三日坊主プロジェクトでは、このどれかにテーマをしぼり、さらにトイレやリビングやキッチンなど、場所も限定するべきだ、と述べている。

大事なのは、きちんと計画を立てて一つをやり遂げることだ。



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三日坊主プロジェクトを達成する秘訣としては

1、余計なことを考えない
2、頑張りすぎない
3、週末を上手に活用する

の三つのポイントを紹介してくれている。

完ぺきを目指さなくとも頑張りすぎずに8割程度でいいと考えれば楽になるし、忙しいなら三日間連続でやらなくとも、1週間おきにやってもいい。と考えると気持ちも楽になる。

ここで、プログラムをつくってみた。
読んだだけで満足していてはいけない、どうせいつかやることになるなら、今すぐやらない理由もないのだ。

「捨てる」
1、今年着なかった服、去年着なかった服を捨てる 9月17日
2、今年使わなかった何かしらの道具、去年使わなかった何かしらの道具を捨てる 9月18日
3、明確に使う予定のない書類を捨てる 9月20日

以上である。