きっかけなんてこない、きっかけだと決めるのは自分自身なんだ。
『夢をかなえるゾウ』って、水野敬也さんが書いた自己啓発系の小説なんですが、もう4部作になってて「本を読んでいる人」なら知らない人のほうがすくないくらいなんじゃないかと思うんです。
私はたまたまこの本に出会った年齢がはやくて、出版された2007年に読んでました。もう13年も前ですね。高校生の時でした。
自分の人生というものに対して、期待をして、でも努力の仕方もわからなくて、努力もできなくて、昔はすごかったんだ、でも今の自分は、なんてうじうじしているサラリーマンが主人公。インド旅行で買ってきたガネーシャの置物に「人生を変えたい」と嘆くと、関西弁を話す謎のゾウの生き物ガネーシャがいて、彼のお題をこなすことで成功への道筋が見えてくる。
そんなあらすじで、ガネーシャのお題も一つ一つは簡単。
靴を磨く
コンビニでお釣りを寄付する
あった人を笑わせる
トイレ掃除をする
その日頑張れた自分を褒める
決めたことを続けるための環境をつくる
自分が一番得意なことを人に聞く
自分に苦手なことを人に聞く
行けを楽しく想像する
運がいいと口に出して言う
明日の準備をする
やらずに後悔していることを今日からはじめる
など
紆余曲折があったり、言い訳があったりしながらも、結局はガネーシャの課題をクリアしていく主人公。サクセスストーリーには感情移入してしまうところもあります。
ただ自己啓発本をいくら読んでも変われない人っていますよね。
昨日までの自分と今日の自分を違う自分にするって、かなり難しいですよね。
慣性の法則って人間にもはたらいているんじゃないかな、と思うくらい。
なにかあるたびに「わたしもかわらなきゃな」と思っている人、気持ちよくわかります。
そんな人に、読んでもらいたい一文があります。一文とはいえ、長いです。
ガネーシャと話している時からずっと心にひっかかっていたことがあった。それは、今まで、恥ずかしい思いをしたり、嫌な思いをするたびに、今の自分を変えたいと思ってきたけど、結局一晩寝たら、なんとなくどうでもよくなって、何か新しいことをはじめるのが面倒くさくて、まあいっかって、いつもそうやって忘れて今日まで生きてきたんだけど、でも、心のどこかでは、いつか変わらなければ、何かを変えなければ、とりかえしのつかないことになるんじゃないか、そんな予感がずっとしていた。会社の同僚と酒を飲んでいても、友人と遊んでいても、なんだかまだ大事な仕事を残してきているような、やらなければならない仕事があるような感覚があるから、心から楽しめなくて、でも、どうしていいか分からなくて、その感覚に蓋をして何年も生きてきた。
「きっかけさえあれば」いつも、そう思っている。まだそのきっかけが僕には来てだけなんだ、そう自分に言い聞かせてきた。⋯でも、本当は「きっかけなんてたくさん転がっていて、恥ずかしい思いをしたり嫌な思いをした時がそれだったのかもしれないけど、そのきっかけを、僕は今までずっと素通りしてきたんだ。だからこのままでは「きっかけ」なんて来ない。それが「きっかけ」であることを決めるのは、今この瞬間の僕なんだ。
目の前のガネーシャは、僕の、そんな思いが見せている幻なのかもしれなかった。
音読してほしいくらい、名文だと思います。
きっかけなんてこない、きっかけだと決めるのは自分自身なんだ。
『夢をかなえるゾウ』は何度でも勇気をくれる本だと思います。