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日記ということにします。しばらくは。

pha著『しないことリスト』は「自分に必要なものはなんだろう」と思ったときに読むのがおすすめ

phaさんの『しないことリスト』は「じぶんには何が必要なのだろうか」「じぶんにはなにが必要ではないのだろうか」という価値観への問いかけに答える、ひとつのケーススタディであると言えます。



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phaさんはブログを長年書き続けていて、公開をしているので、内容自体はブログを読めば同じようなことが書いてあるのですが、そのブログのコメントの中で印象的だった言葉があります。

僕がこういう選択をしているのは、本当にある種の社会的能力がだめだめで、こう生き方しかできないからです。必然性と能力は密接に関係していると思う。あと、普通に働ける人はとてもすごいと思っています。


しばらく前(もう6年くらい前?)にイケダハヤト氏が「脱社畜」とか「東京から脱出」とか、まじめに働いているなんてバカらしいという意見がもてはやされた時期がありました。その後、えらてんさんを中心に「労働者は尊いんだ」というような言論もあったのを見ていて、まさしくそうだ、働いている人はえらいしすごい、バカにして社会脱出を扇動していくなんてイケダハヤト氏はブランディングのためとはいえいかんなあ、と思ったものでした。

phaさんの態度というものは扇動的ではないので、なるほどなあ、そういう考え方もあるんだなあ、という人は多いと思います。

私がphaさんの言葉をよく覚えているのは、自分も、ある種の社会的能力が欠如していて「ふつう」にいろいろなことをやっていくということが非常にむずかしいのだと自覚したからでした。

私は自分の欠陥に気づいた後、自分のダメさを前提として、数少ないダメではない能力を生かしながら社会で生存していく、ということを考え「茶人」というひとつの解答を発見したところがあります。

生まれた瞬間から飢えの心配をしなくてすむという点だけで現代(のとくに日本)というのは、歴史上最高に「生きていくこと自体のハードルが下がった時代」だと思っているのですが、それでも生きづらさはそれぞれ個人に内在しています。

『LIFE SHIFT』などを読むと、人は100年近くも生きてしまう時代になっているらしい、ということがわかります。そして、これからの時代は、親世代親の親世代とはまったくちがう社会になる、ということが指摘されています。

簡単な要約はこうです。

教育を受ける期間を経て、会社に所属して引退まで働き、引退してからは余生を過ごすという3ステージの人生というものが、今までは「あたりまえ」だった。会社に所属することがアイデンティティとして機能していたし、引退後には年金によって生活の保障もされていた。ところがこれからの時代は「あたりまえ」が大きく変化することになる。

医療技術の発展、食糧問題の解決。そしてはじまる長寿化社会。テクノロジーも進化することで、雇用の変化、職種の変化が起きる。長寿化社会では企業も行政も財政面で年金システムの持続が困難になることで、「仕事の引退」もなく、老後の生活資金を十分に確保できた一部の富裕層以外は、80代まで機らかざるをえないだろう。

そして、みずからのアイデンティティの形成や、ライフスタイルも自分にふさわしいものを、自分自身に向き合いながら自主的に築いていかなければならない時代になってくる。

自分に向き合いながら、三つの資産を形成していくことで、人生に備えることができると、リンダ・グラットンは指摘している。スキルや知識などの生産性に関わる資産。肉体的身体的な健康と幸福、あるいは家族や友人といった良好な人間関係もふくむ活力資産。そしてアイデンティティの形成や、転職、居住地の移動などにも関わってくる、多様性に富んだ人的ネットワークや新しい経験へのオープンマインド、深い自己理解などを含む変身資産。

kamkamkamyu.hateblo.jp


長寿は厄災か、という恐ろしいワードも本文には飛び出してきますが人類は社会を改善することによって生きていくことのハードルを下げることに成功したのに、わざわざ上げているのではないかと思うところがあります。

社会に求められている生きていく能力が不足している、のに、生きてしまう(飢え死になどするわけではない)という社会で、社会からはじかれた人たちは「自殺」していくしかないのだろうか、と暗い気持ちになります。

日本では毎年2万人の人が自殺していて、それだけ多くの人が生きづらさを抱えているという表れでもあるでしょう。悩みの9割は人間関係に由来する、といわれるように、まわりの人との関係性がうまくいかなくてという場合もあるでしょうし、現実的にお金がなくて、しかもだれにも助けをもとめられなかったということもあるかもしれません。

悩み、というのは「期待通りにならない」というところに本質がある場合も多いです。

ほしいもの、ほしい言葉、ほしい人、ほしい食べ物、ほしい名誉や称賛。なにかを欲しがる時、手に入れられないことで、ショックをうけるでしょう。

そういう意味では「諦める」という戦略が解決してくれる、そういうことを『しないことリスト』では学ぶことができます。

・余計な買い物をしない
・お金で解決しない
・高い家賃を払わない
・自分だけで独占しない
・頭のなかだけで考えない
・読みっぱなしにしない
・デジタルにしない
・過去に固執しない
・だるさを無視しない
・元気でい続けない
・睡眠を削らない
・イヤなことをしない
・二択で考えない
・孤立しない
・つながりすぎない
・差別しない
・仕事に身を捧げない
・人の意見を気にしない
・議論しない
・完ぺきを目指さない
・長生きしない

など、ここではいくつか省略したけれど書籍では合計で36個のしないこと、が書かれています。

すぐにでもとりいれられる考え方もあるので、ぜひ、頑張りすぎてしまう人、人はこうあらねばという理想が強い人は読んでみるといいと思うものの「こんなダメ人間の言うことをまにうけたらダメだ」と言われるのかもしれない、とも思ったり。

けれど、人間だれでも病気になるし、怪我をしたりするし、体が弱れば心も弱って、自信がなくなったり、人に離れられてしまったり、人とうまく関係を作れなくなってしまったり、収入が減って家や生活のグレードも下げなくてはいけなくなったりするものです。

長い一生のあいだ、順風満帆に、理想的な生き方だけをして生きていけるわけではないので、そういう時に、どう折り合いをつけるか、妥協するか、諦めるか、という問題に必ず向き合うことになります。

誰もが、自分にあった生き方を模索しなければいけない、ではそもそも自分はなにをよしとして、なにを悪いと思っているんだろう、と問い直したいときにぜひお勧めしたいです。